リーダー  倉智嘉久 (大阪大学大学院医学系研究科 教授)
  久保暢子 (大阪大学大学院医学系研究科 研究補助員)
  加来麻衣子 (大阪大学大学院医学系研究科 研究補助員)
  宇津絢子 (大阪大学大学院医学系研究科 研究補助員)
  七岡信子 (大阪大学大学院医学系研究科 研究補助員)
  張 桂琴 (大阪大学大学院医学系研究科 研究補助員)
  白神美智恵 (大阪大学大学院医学系研究科 研究補助員)
  周 志衛 (大阪大学大学院医学系研究科 研究補助員)
  奥田依里 (大阪大学大学院医学系研究科 研究補助員)
  澤田真矢 (大阪大学大学院医学系研究科 研究補助員)

 ヒトの細胞、器官、臓器の機能をグリッド計算技術を用いてシミュレーションし、疾患に対する診断や薬物・手術療法を支援するシステムを構築し、これをネットワークを介して地域医療機関や製薬企業と共有できるようにする。これにより地域医療機関における診断・治療や製薬企業における創薬の効率化を促進する仕組みを構築する。

2002年度の研究計画と研究成果(PDF)

論文発表
  • 山田充彦、辻前賢司、鈴木慎悟、倉智嘉久、「薬物作用シミュレーションの創薬での役割」、医学のあゆみ205巻7号、2003年
  • 中本将彦、佐藤嘉伸、菅野伸彦ほか、「人工股関節置換手術における手術計画過程の客観的記述に基づく自動手術計画」医学のあゆみ205巻7号、2003年
  • 濱田星紀、中村仁信、「心臓疾患のCT診断」、臨床放射線 47巻1号75頁、2002年
  • 濱田星紀、中村仁信、「CTによる心機能評価の進歩」、日本臨床生理学会雑誌32巻 2号57頁2002年
  • 桝本潤、佐藤嘉伸、堀雅敏、村上卓道、上甲剛、中村仁信、田村進一、「異なる時相間におけるCT腹部肝臓領域の非剛体レジストレーションの検討」、信学技報 M12001-89 59頁2002年
口頭発表
  • 辻前賢司、石井優、山田充彦、倉智嘉久、第101回日本薬理学会近畿部会、キニジンのHERGカリウムチャネルに対する阻害の効果の検討、2002年
  • 倉智嘉久、第20回生命情報学セミナー、異分野融合によるin silico Human研究について、2002年
  • Tsujimae, K., Ishii, M., Kurachi, Y., XIVth World Congress of Pharmacology, Kinetic properties of quinidine-block on the HERG channels expressed in Xenopus oocytes. 、2002
  • 倉智嘉久、第3回インシリコヒューマン研究会、心筋の興奮性モデルと薬物作用、2003年
  • 辻前賢司、石井優、山田充彦、倉智嘉久、第76回日本薬理学会年会、キニジンのHERGチャネルに対する阻害作用の効果の検討、2003年
  • 辻前賢司、石井優、山田充彦、倉智嘉久、第67回日本循環器学会学術集会、A rapid voltage and time-dependent quinidine-block of HERG channels causes reverse frequency-dependency. 2003年
  • 中本将彦、佐藤嘉伸、菅野伸彦ほか: 手術計画過程の客観的記述による自動人工股関節手術計画システム、第42回日本エム・イー学会大会、札幌、2003年
  • Nakamoto M, Sato Y, Sugano N et al: Automated CT-based 3D surgical planning for total hip replacement: A pilot study, Computer Assisted Radiology and Surgery: 17th International Symposium and Exhibition (CARS 2003)), London, UK,2003
  • 横江勝、阿部和夫、奥野竜平、赤澤堅造、佐古田三郎.「パーキンソン病におけるfinger tappingの計測」日本エム・イー学会、電子情報通信学会MEとバイオサイバネティクス研究会、計測自動制御学会 生体生理工学部会、IEEE EMBS Japan Chapter共催. 第1回サマースクール「生体へのアプローチ」_発明・発見の喜び_.2002年8月1日(木)〜8月3日(土)(富山)
  • 阿部和夫、佐古田三郎.インシリコ神経・筋― 臨床の立場から.第3回インシリコヒューマン研究会 2003年2月1〜2日(大阪)
(1)心臓の興奮性モデルと薬物作用に関する研究
  1. 薬物結合状態を含んだIKrチャネルのマルコフチェーンモデルの作製と、それを高速に演算するプログラムの作製を行う。さらに、プログラムのグリッド化を行ったときの計算効率の向上を図るため、状態の確率の時間変化を複数の時定数の成分に分解して取り扱うための手法を開発する。
  2. 心筋細胞活動電位シミュレーションプログラムの精度を高めるため、プログラム中の特に膜電位依存性L型Ca2+チャネル、膜電位依存性K+チャネルに関するパラメータを、実験事実に基づき正す。このためには、追加実験が必要になる可能性もある。
  3. IKrチャネルのマルコフチェーンモデルと心筋細胞活動電位シミュレーションプログラムを合体し、一心筋細胞レベルにおける薬物作用のシミュレーションプログラムを完成させる。これは、多細胞で構成される心臓全体の興奮性におよぼす薬物の作用をグリッド計算するために必要な段階である。計算コードのグリッド化に要する、活動電位の各相に対する計算精度の動的な調整を行うことにより、各細胞の計算時間の無駄を減らす手法も開発する。

(2)ネットワーク型股関節手術計画システムの開発
  1. 対話型システムに関して

     リモートレンダリング方式に対抗する方式として、人工股関節形状ファイルを暗号化してダウンロードする方式(暗号化ダウンロード方式)を検討しシステムとして実装する。この方式を用いて大阪大学病院のシステムを国立大阪病院において使用し、実験的に評価する。また現在、CTデータから患者骨格形状の抽出および3次元再構築するのにかなりの手間を要していることから、この部分の簡便迅速化(さらには自動化)を検討する。骨格形状の個人差をできるだけ少数のパラメータで記述し、これらのパラメータの変更により各個人の骨格形状を近似し、それに基づき効率よく形状抽出を行なう。

  2. 自動システムに関して

    関節変形が進行している患者に対しての自動手術計画
      関節変形が激しい患者の場合に、整形外科医がどのような手順で部品選択/設置計画を立てているのかに関して知識(制約条件)の抽出する。変形の程度に応じてどのような制約条件を用いているのかを分析/分類し、アルゴリズムとして定式化、および実装を行なう。
    アルゴリズムのグリッドコンピューティング化
      2002年度では、1メーカの部品群に対して最適選択・設置を決定するのに、最適な場合によっては数時間の計算時間を要していた。複数のメーカからの部品群から最適メーカの選択までも含めるとさらの計算時間を要する。アルゴリズムの効率化を計ると同時に、グリッド化によりレスポンス時間の短縮を検討する。

  3. 自動システム汎用化と検証のための人工股関節データベース/患者データベースの構築

    人工股関節データベースの構築
      2002年度に行なったように、自動システムを個々の人工股関節メーカ毎に方法を実装するのではなく、一定の手順で人工股関節形状ファイルをデータベースに登録することにより、あらゆるメーカの人工関節を処理できるような汎用的な自動システムの構築を行なう。
    データベースの構築
      2002年度では患者データ3例にのみ適用したが、多数(100例程度)の患者に対しての大規模な実験を行なえるようにするために、関節変形の程度によって分類した患者データベースを構築する。

(3)パーキンソン病患者の運動機能評価システムの開発
パーキンソン病(PD)における手指タッピングの臨床的評価と機器による計測との比較検討を行う。

 PD患者の母指と示指に加速度センサーを装着し、手指タッピングを行ってもらい、その様子をビデオに撮影する。広く用いられているPDの重症度評価であるunified Parkinson's disease rating scale (UPDRS)と我々が考案したリズム、速度、振幅のそれぞれに対するスコアを用いて複数の評価者に、ビデオでの手指タッピングを点数化させる。評価者間の差異、UPDRSとリズム、速度、振幅のそれぞれに対するスコアとの相関を評価する。加速度センサーから得られたデータを整理し、計算することで、リズム、速度、振幅の評価項目を得る。臨床的な評価と機器を用いての評価との間の相関について考察する。さらに、Central pattern generatorなどの力学系モデルに基づく方程式にあてはめることで手指タッピングの運動シミュレーションモデル形成を目指す。この力学系モデルを、逆問題も含めて決定していくには多大の時間と手間が必要となるが、本バイオグリッドを利用して並列処理を行うことで、計算時間が節約されるだけではなく、様々な場合についての計算を行うことで運動シミュレーションモデルの妥当性を高めることが期待される。

(4)多列型検出器搭載のCT(MDCT)の応用に関する開発
  1. MDCTを利用した心機能評価法の開発

    MDCTを用いた心臓の画像評価においては、心電図同期撮影法において更なる時間短縮を模索し冠動脈のより精細な描出、特に動脈壁の評価を可能にする。

  2. MDCTにより得られた肝臓の3次元像の解析

    放射光X線CTを用いて肝臓血管系の微細構築を撮像し、得られた画像にvolume renderingによる3次元処理を行い、3次元構築の可視化を行う。

(5)各種臓器実質細胞における遺伝子発現と機能・形態との相関に関する研究
 遺伝子発現に関しては、平成15年度中には全ての計画を完了し、ラットの辞書として発表できるよう進めている。また、各臓器における遺伝子の発現解析を進めると共に、発現遺伝子の局在の検討をin situ hybridizationで検討する。リズム関連の遺伝子に付いても、細胞レベルの発現を通して解析を進める。

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